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カップ焼きそばの作り方を文豪が書いたら 宝島社

カップ焼きそばは、ゆでそばであって、確かに焼きそばではない。一度もそんなことを考えてない小生は、ボーッと人生を生きているんだなあとつくづく思う。ゆでそばだったら、あのソース味を連想できず、売れなかっただろう。 小生が焼きそばを食べる時は、当直の時か、締め切りに追われているか、食欲がないけど論文書く気も読む気もない時か、院内ローソンが閉店している時である。当直は後輩と二人で行うが、気が利く後輩は早々に電話してきて、「今晩は出前何にしましょう?」と聞いてくる。ライザップで一時減量に成功するも、その後簡単にリバウンドしてきた後輩は、昼飯後くらいに晩ご飯の相談をしてきて頼もしい。ただ、食後すぐは考えられないので、できればもう少し後にしてほしい。電話してこない後輩は、病態に関する相談も往々にしてして来ず、かといって治療がうまく行ってなさそうなのはコメディカルの人々から聞こえて来て、早々に介入をしないといけないので厄介である。 食べた後に、なんとも言えない気分の悪さを感じるが、超忙しい時はそんな気にならないので、気分の問題であろう。インスタント食品は身体に悪いという刷り込みが単に後味を悪くしているのかもしれない。ただ、忙しい時は、ロキソニン、PPI、レッドブル併用なので、それらの効果かもしれないが。 かやくを麺の裏に敷いておけば、ふたを除去した際にかやくがついてくる問題が解決できるとは知らなかった。誰も見ていない時は、丁寧に蓋に付着したかやくをとるが、誰かが見ているときは無造作に蓋を捨てる。人の目は気になる。 医局のインスタント食品は、秘書さんが買って来て、なんとお茶付きで100円である。赤字経営らしい。にもかかわらず、医局員の25%が100円を支払っていないらしく、再三掲示板に無銭飲食禁止と書かれる。オフィスでグリコは当院では成り立たない。寄付歓迎します、と言われるが、秘書さんが見ているときは200円(決して500円ではない、貯金箱に2回入れる動作がだいじなのである)いれるが、見ていないときは、しっかり100円の支払いだ。 まだ、湯切りとソースかけ、ふりかけなどの作業が残る。カップ焼きそばへの道のりは長い。

裏道を行け ディストピア世界をHACKする 橘玲 講談社現代新書

  橘さんの著作にしては、引用が冗長で途中は読み飛ばした。特に恋愛のところでは、GAMEの内容が延々と続くので、それを一部読んだことのある小生のようなものにはおすすめできない。あと、金融のところでは橘節が見られるけど、難解であり、小生にとっては理解できないところがあった。(つまり橘さん的には、小生は金融的にハックできてないことになるだろう)  本書では、ルールを破って普通の人の上をいくことをハックと定義している。現代は知識社会が高度化し、仕事で要求される知識スペックが上がっている。そのため多くの人が、人生をハックできずに底辺を彷徨う結果となっている。本書のギャンブル依存に関する考察が面白かったので、下記にまとめてみた。  ギャンブル依存の人は、時々儲けることが快感でやめられないと思っていたが、実は儲けようと思ってギャンブルをやっているわけではないという。時には、楽しみを求めてすらない場合もあると。ギャンブル中は全てを忘れてゾーンに入ることが目的なのだ。解決できない問題を抱えた人々の避難場所になっている。ギャンブルをさせる側も、それらのことを知っており、巧妙な手口を使っている。スロットのボタンを押させることで、その場をコントロールしているかのような錯覚を起こさせるのだ。人生をコントロールできない人々にとって、このコントロール感は、時間を忘れて没入できるらしい。また、大損させることなく、少しずつ損をさせることで、ギャンブルを持続可能な状態にしているのだ。(ギャンブルのSDGs)。アメリカはラスベガスをはじめとして、ギャンブル天国と考えられているが、実は日本の方が、パチンコ、スロットの台数を加味するとアメリカの4倍近く多い、ギャンブル天国なのだ。

Dark Horse 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代 三笠書房

  今までの成功とされるのは、「出世の階段を登ることによって、富と地位を獲得すること」であった。そのため、勉強し、良い学校を卒業し、良い就職先につくことが良いこととされてきた。しかし、良い学校を出たとしても良い就職先につくことが出来る訳ではなく、良い就職先とされていた所が消滅することも珍しいことではなくなった。それはつまり、明確な定員が決まった目的地に、より速く、コースから逸れずに如何に到達するかという、今までの標準化されたやり方では通用しなくなった事を意味し、そのためのノウハウも今では通用しなくなったのである。もちろんこの方法で、成功にたどり着いた人々もいるが。  では、新しい時代の成功とは何だろうか?それが、本書に登場する数々のDark Horse達が述べているように、「充足感の追求」という決断を行う事である。実は、この「充足感の追求」は、アメリカ独立宣言にも記載され、長い歴史があるが今までは蔑ろにされてきた。まず、お決まりの「成功とされるもの」を手に入れてから充足を得ようとしてきたのだ。例えば、猛烈に働いて、定年後に悠々自適の暮らしを行うような。しかし、定年クライシスと言われるように、会社を辞めれば実は何者でもなかった事実に唖然とし、何も充足感が得られない事からも、成功の後の充足という法則は現代には適していない事がわかる。  充足感を追求するにはどうしたらいいのだろうか?それは、IQのような標準化された指標ではなく、ひたすらに自分と向き合い、自分が何を行っている時に充足感が得られるのか体感することが重要なのだ。子供はひたすらに自分のやりたい事をやる。個人の充足感など考えもせずに。それが分からなくなった大人は、とにかく何をしている時に自分に充足感が得られるのか選択し試行錯誤し続けることであり、目標地も持たず、ただひたすらに選択し続ける事なのだ。そうすることにより、充足感を持った最高の自分になる事ができる。 https://www.mikasashobo.co.jp/c/books/?id=100580700

老人支配国家 日本の危機 エマニュアル・トッド 文春新書

 親日家のフランス人である、トッドの日本論である。トッドは家族形態のあり方から歴史を紐解くことを専門としている。その彼が、大好きな日本に対し、特に出生率の低さに関して警鐘を鳴らしているのが本書である。 コロナ禍が露呈したのは、グローバリズムの不都合な現実である。グローバリズムにより、国内産業が空洞化したフランスでは、マスクや人工呼吸器も作れず、医療が破綻してしまった。たいしてドイツでは、国内産業が生きているのでそのような事態には陥らなかった。それは、そのままフランスとドイツの死亡率の差を生じる結果となった。日本にいる我々は、ドイツ人の生真面目さが新型コロナに対する日本人のあり方と似ているからと思っていたが、経済の側面からも筆者は考察している。結局フランスは、ロックダウンせざるを得ず、富裕層は国外に避難し、貧困者はフランス国内に止まるを得ないというペストの時代を繰り返したというのだ。これもグローバル化による貧富の増大がもたらした負の側面である。 筆者はアメリカについて、トランプの当選を予測したことで知られている。人口学が専門であり、中年白人の死亡率が上昇に転じたことから、トランプ当選を予測した。過去には、乳幼児死亡率の上昇からソ連崩壊も予想している。死亡率が上昇しているということは、生活がうまくいっていない(自殺、ドラック中毒、アルコール)証であり、変革を予測するものなのだ。そのトランプ現象からアメリカの現状の面白い考察をしている。トランプ現象において、エリート層とポピュリズム層が分断されたが、国内では融合できなくても、外に向かって行くときには融合できるというものなのだ。過去の真珠湾攻撃の際のアメリカの狡猾からすると明白である。そのため、仮想敵国を常に必要とし、それは今は中国なのだと。 アメリカを含めたアングロサクソンは、破壊と創造が得意である。それも、家族のあり方から来ているというのだ。日本などとの直系家族と異なり、子供たちは大人になると親元から離れ出ていかなければならない。そのため、新たに0から作らねばならないのだ。対して、日本のような直系家族では、伝統を重んじるために破壊するよりも維持を目的とする。そのため、日本からはイノベーションが生まれにくいというのだ。 日本でのコロナ禍で明らかになったのは、人口に対する死亡率の低さである。それは彼は、老人を守って、若者に制

僕はやっと認知症のことがわかった 長谷川和夫、猪熊律子 KASOKAWA

  認知症の長谷川スケールで有名な長谷川先生自身が認知症(日常生活に支障を来している状態)になったとのことで、その思いを記載したのが本書である。認知症ではあるが、本を記載できる(猪熊さんのサポートも大きいと思うが)くらいの、まだ認知症の程度としては軽いようである。  認知症になっても研究心は旺盛で、「症状が進行している自分をもう一人の自分が見ているような気がする」とのこと。朝方は調子が良いが、夕方にかけて次第に物忘れが多くなる、自分が体験の「確かさ」がはっきりしなくなったなどのご自身の症状を詳細に記載している。認知症でいちばん多いアルツハイマー型認知症の場合、一般的に、まず時間の見当がつかなくなり、次に場所の見当がつかなくなり、最後に人の顔がわからなくなるとの事である。  認知症に関し、医療に携っている小生も認識を間違っていた事にいくつか気づいた。まず、長谷川スケールの測定方法。100-7を繰り返すもので、100-7=93と答えたら、93-7はとやっていたが、それではダメで、93という数字を覚えていることも重要とのことで、そこから7を引いて下さいとやらないといけないそうだ。次に、認知症になった人自身も、以前であれば難なくこなせていた配慮や気配りができなくなってきているのを感じる事ができている事。つまり、できなくなったり、わからなくなっていることを「認識」できている事。  この認知症であることを認知症患者さん自身が認知していることを理解していないと、認知症になった人への対応が雑になり、人間らしく扱わない(どうせ言ってもわからない)ことになり得る。長谷川先生も、不当な扱いをされて、気持ちが落ち込んだそうだ。なので、「じつは、自分は認知症なんですよ」といえるような社会が大事だと言っている。認知症の当人抜きで、いろんな事を決めないでほしいと。認知症の人と生きる上で、笑いはとても大事な事、話を良く聴いて欲しい事、寄り添うことの大事さ。当たり前のことであるが、認知症になった人も人間なのだ。  「おじいちゃん、私たちのことをわからなくなったみたいだけど、私たちはおじいちゃんのことをよく知っているから大丈夫。心配いらないよ」この長谷川先生の娘さんが言った言葉は、認知症の人と接するにあたり、とても示唆に富んでいる。

残酷すぎる成功法則 エリック・バーカー著 飛鳥新社

 橘玲さんの著作の中に引用された本書を読んでみた。「残酷」というタイトルから、橘さん得意の生まれながらの格差に関する本かと思いきや、ちょっと違った。原著タイトルは、Barking up the wrong treeであり、意訳すると「活躍するには場所を選べ」ということだ。如何に、自分自身で選択した結果、幸福になることができるのか、多くの論文baseに記載されている。 徹底的に個人で選択をすることの重要性が書かれている。 自分が一番の個性は?変わり者と言われる分野があれば尚良い 私は人生に何を望んでいるのか? 資産や昇進などの「履歴書向きの美徳」か、親切さや誠実であるなどの「追悼文向けの美徳」か 仕事はしなければならないことでできているが、遊びはやらなくて良いことからできている。いかに遊べるか! 結婚生活、家族生活と仕事との両立は、かなり困難を極める。全てはトレードオフの関係だからだ。天才性や犯罪性と安定は相反するものだ。しかし、我々はアインシュタインではない(夫や父としては最悪であった)。革新的で歴史に残るにはIQ 120前後必要とのことであるが、持っていないものはしょうがない。かつ、世界のエリートは幸せを感じてないことが多いという。自分の現状に十分満足しつつ、仕事と家庭の両取りをするには 結婚後1年未満では、恋愛結婚の方が見合い結婚より、満足度が高い。しかし、10年目以降になると逆転する。お互いが良い関係になるために努力するからだ 完璧主義の人は良好な結婚生活になる可能性が33%低い 思い続ければ叶う、というナポレオンヒルの言葉があるが、それは少し危険だという。人間の脳は妄想すると叶ったかのような錯覚に陥ってしまい、リラックスし行動しないのだという。思うだけではなく行動することが重要なのだ。行動するために、 やらないことをいかに選択するか(やりにくくする環境を、お菓子は箱に入れ、スマホは遠くに) 自分にとって最重要なものは何か ベンチャー企業が投資するかの如く、トライアンドエラーを繰り返す。エラーをしないと成功は導かれない Ifとthenを繰り返し考え、シミュレーションする 1万時間の法則には、良き指導者が必要である(良き指導者の期待により、生徒は飛躍的に成長する) 感情のコントロールについても記載されている 怒りを感じた時は、ゆっくりとしたペースで子供に語りかけ

# 社会保障はじめました。 猪熊律子 Scicus

社会保障に関しては、生きていくために必要であるものの、社会人になるまで学んだ記憶がない。成人してはじめて国民年金を払い始めた際も、正直なんのことかも分からずに払っていた。 社会保険庁(現日本年金機構)による年金の記録支払い記録が曖昧であると騒ぎになった2007年(2009年に民主党政権になったが結局1922万件が未解明のまま)に、自分の年金履歴を確認すると、大学病院での研修の最終月が未納になっていた。ちゃんと、3月31日まで働いたのに。確認してみると、最終月は雇用されてない?のかよくわからないが、社会保険ではなく国民年金になっており、自主的に払わないといけなかったそうな。おそらく、大半の研修医が未払いのままになっているのではなかろうか。 高齢化が進み、若者が高齢者を支えるのが不可能になった現在、将来年金はもらえなくなる!などの言説が流布しているが、国民年金である基礎年金の財源は、半分が税金となっている。日本が財政破綻しない限りは税金の投入割合は増加し、国債でなんとか先送りしながら年金制度は続きそうである。そのため、国民年金は払っておいた方が良いというのが著者の考えである。現在の国民年金納付率は65%程度しかないとのことだ。少なくとも10年支払い履歴がないと、年金がもらえなくなる(病気をした際の障害年金なども)ので注意が必要だ。 厚生年金や組合健保には今のところ税金が投入されていない(協会健保には16%ほど税金投入)。企業業績が悪くなると、今後どうなるかはわからない。 社会保障の歴史から、現在の仕組みの基礎を網羅している。